「安くして」「タダでイイ?」フリーランスクリエーターがよく言われる言葉。安くタダにできない理由

デザイナー/フォトグラファーの大阪ミナミ街ぶら日記

「安くして」「タダでイイ?」フリーランスクリエーターがよく言われる言葉。安くタダにできない理由

クリエーターのお仕事は無料だと思われる!?

悲しい事に、個人経営、小規模経営、フリーランス、SOHOでクリエイターをやっていると、しばしば出会ったお客様からお仕事が無料だと思われることがあります。
また、「一度サンプルを見てみたい」と言われ、サンプルを作って送るとそのまま音信不通になることもあります。
作ってくれたもので売り上げ効果が無かったので、お金が払えません!と強気で出て来られることもあります。
しかし、中小企業や有名企業でクリエイター職をやっていると、そういったことに遭遇しません。
それでは一つ一つ紐解いていきましょう。

タダで仕事が出来るだろうと思われる理由

・一人で家でやっているのでお金がかかっていない
・自身のスキルのみで作り出せる
・趣味の延長
・勉強中なんでしょ?スキルアップに協力してあげる
・上司も居ない事業主だから融通が利く

主にこの5点に尽きると思います。

フリーランスは仕入れにお金がかかってない?

「他店より1円でも高い場合は値引きいたします!」
ヤマダ電機さんはこういったキャッチセールスが店内で見受けられる事は有名かと思います。
なので、商品を購入時、値引き交渉ありきでの商品購入をされる方、または仕入れをされる方がいらっしゃるかと思います。
ですが、クリエイター職は一つ一つがオーダーメイドなので、商品(成果物)の質がまったく異なります。
大きな電気屋さんだと、建物の費用と維持費、販売用商品の仕入れ、駐車場などの管理、電気代、スタッフの人件費、運営・企画・販売・広報の出稿費など、お金が非常にかかっている事は火を見るよりも明らかに分かります。
大きな会社さんだと、ビルのテナント料、人件費、機材、電気代、出稿費、管理費等の費用が掛かっていることが分かります。
フリーランスだとどうでしょうか?ビルのテナント料は事業をされている場所に寄りけりですが、生活を兼用されてる方でも家賃無しで運営している事はまず考えられません。
また、お仕事をする際にはビルに事務所を借りても、自宅で兼用しても専用のスペースが必要になります。よって、家賃はかかります。
人件費についてですが、スポットでお手伝いさんを時給で雇っても給料を支払わないといけません。また、同業のフリーランスの方にも協力を仰ぐ場合もあるので、人件費もかかっています。
機材はもちろん、制作するためのパソコン、机一式、データ管理のための記憶ストレージ/デバイス/小規模ネットワーク(又はクラウド契約)、打ち合わせのためのノートパソコンやタブレット、ドローイングデバイス類(イラストレーターさんの場合)、制作のためのソフト一式(Adobe)、カメラ/照明/撮影機材一式(カメラマンさんの場合)、動画編集ソフトと動画編集用パソコン(映像クリエーターさんの場合)、自社用サーバーなど随分種類とお金がかかっていることが分かります。
電気代も生活以上に使うことも多いですし、自社サーバーを運営していれば、サーバーマシン用の空調機器(24H稼働)、設置用ラック、地震対策、定期メンテナンスまで必要になってきます。
6畳一間程度のアパートだと寝る場所も無くなりますね。
自身の事業のプロモーションも少なくとも必要な場合もあり、その際の出稿費ももちろんかかりますし、税理士さんに経理などをお願いしている場合はもちろんその費用も掛かります。
これらを維持しながら自身もお仕事をこなさなくてはなりません。
費用の掛かる項目を上げると、中小企業や有名企業さんと実は規模は違えどそこまで差が無いのが実情です。
”事業を興す”と言う事は、経営を始めていくと言うことなので、もちろんと言えばもちろんですね。
なので、クリエイターのお仕事をする環境を整えるだけでも、維持・運営・管理・人件費を抜いても非常にお金がかかっていることが分かります。

クリエイターは魔法使いでも錬金術師でもありません

ハンドパワーを使って思い通りに成果物を生み出せたら素敵ですね。
制作にはそんな便利な物はなく、地道にコツコツと考えて作り上げていく大変な作業です。
また制作にはプロセスがあり、イメージを形にするにも道具を使います。
道具自体を使いこなすスキルも、長年の実務経験があるから出来る事です。
考えの整理や設計も、長年の実務経験と、現場での様々なケースを見てきて知っているから柔軟な対応も可能になります。

クリエイターになることは趣味?

確かに好きな事で生活してご飯を食べていけたら、と言うのが原動力にはあります。
しかし、クライアント様が居て、顧客目線でお仕事として行う以上趣味と言う枠を超えたプロフェッショナルである必要があります。
趣味だと好きなものを作って自分で楽しめばそれは趣味です。目的は自分が楽しむことで、そこにお金をいくら注ぎ込んでも問題ありません。
趣味なら、別に生活の為の仕事をしていて、それで生活が成り立っているので、ご自身の収入の範囲内で楽しめばいいです。
しかし、ビジネスともなるといくらでも無計画にお金を注ぎ込むことは出来ません。
あくまで”それでご飯を食べていく事”が大前提となります。
技術や考え方も自分が楽しむものでは無く、クライアント様を満足させる・目的を達成させる、そのための制作である事を第一に認識することが大事です。
時には厳しいクオリティージャッジを受けることもありますが、お客様の気持ちや意向を聞けるチャンスなので、どのように受け取ってどのように反映するかは個人個人でかなりの差があります。
制作する意識も、自分優先ではなく顧客優先であることから、はっきりと趣味ではないと言い切れます。

フリーランスは業界未経験ではかなり難しい

大学在学中にデザインの勉強をし、勉強ついでに依頼を受ける。と言うパターンをよく聞きます。
あながち無理では無いですし、そこからスタートした人が実際に会社を大きくして今も制作会社を経営されてる方もいらっしゃいます。
しかし、学校で受講する勉強と実務にはかなり大きな違いがあります。
勉強と言うのは基本的には基礎を習い、その基礎を用意された課題の中で応用し、そのスキルを定着させていく学習です。
この用意された課題と言う部分がネックになり、実務ではこういったひな形やクリエイターの講師が考えつくような”課題”はまず登場しません。
まるっきり突拍子もない要望や提案が現場では飛び交います。
こういった予測もしないパターンを解決していくうちに増えていくのが”引き出し”と言う実務スキルです。
お仕事でクリエイター職をやっていく場合には、この引き出しの数がモノを言います。
また、この引き出しをたくさん持っている人は、会議や打ち合わせの時に提案できるパターンの数が圧倒的に多いです。
色んな実務ケースに遭遇し、そこをいかに乗り越えてきたかの場数が無いと、基本は一人で何もないところからスタートするフリーランスでは、訪問先でプレゼンテーションさえも難しく、要望をヒアリングし、聞かれた事にも明確に回答も出来ず、その(プロジェクトなどの)実現のための提案やコスト、規模の想定もケースも少なく粗末なものになってしまいがちです。
フリーランスは営業をこなしてお仕事をもらってくることから始まるので、学校上がりの実務系経験なしだとこの時点でつまづくことが多いと言えます。
IT業界は、勉強はじめ~成功した大会社の社長にまでなってもスキルアップと勉強は必須です。これを怠ると、どこまで登り詰めていてもあっという間に転落してしまうことでしょう。
人間は一生勉強と昔の人は言っていましたが、IT業界もまさに一生勉強とスキルアップ。
時代に取り残されないよう常に先を見ていることは大事です。
しかし、お仕事を頂いて経験を積むと言うより、フリーランスをされている方はすでに講師を出来るくらいのレベルの人が多いので、人の作り上げた組織の中のプロから抜け出た更なるプロと言えますので、知識と技術のレベルは一般企業の平均的な会社員さんのレベルではないと言えます。

個人事業主とは

事業を興こせば経営者。一人でも社長と呼ばれる存在です。
どんな会社でも社長まで顔が通れば大抵は融通が利くことが多いですが、残念ながらフリーランスの経営状態は決して楽ではありません。
(大きな会社の経営が楽と言っているわけではありません)
事業ももちろんそうですが、生活状態も時期によっては困窮していることもあります。
また、ビジネスプロセスの規模が中小企業様よりも小さく、経営そのものも傾きやすい傾向にあります。
つまり、フリーランスだからこそ、気持ちの面では常に融通は効かしているつもりでも金銭的な面での融通を求められると辛いことが多いと言えます。
またスタート直後は、本職のクリエイター職よりも、経理や資料作りなどの事務作業、営業活動などが多く、本業にまでたどり着けません。
一人経営を続ける場合は、こういった経理事務処理も行っていく必要があり、余裕のない立場であるとも言えます。

株式会社とは

その会社の資本を所有する”株主(出資者)”が居て、形式として経営執行権限のある役員(取締役など)を2名以上選出して任命・就任、決算時には公告をする必要があります。
また、法人登記(1円で可能)を税務署へ届け出る必要があり、法人税がかかってきます。
また、役員の任期も決まっていて、2年ごとに取り決める必要もあります。
大きな会社(上場企業)の場合は、株式を公開していて、その会社の関係者でなくても会社の事業に参加する(株主)になることが可能です。
上場企業になると、株主による公平なジャッジ(株主総会)を受けることになり、代表取締役始め役員たちは赤字経営が出来なくなります。(もちろん非上場でも個人でもできませんが)
経営状態によっては資本を所有する人たちで経営者を交代させる場合があるなど、会社自体の所有者と、会社を運営する経営者が明確に分けられた組織と思えば分かりやすいでしょう。(このことから非上場企業とは資金力が圧倒的に違うことが分かります)
中小企業の殆どは株式を公開しておらず、小さな株式会社の資本株主は代表取締役(社長)本人や親戚身内、共に起業した仲間や友達であることが殆どです。(よく言われる家族経営です)
事業規模も、個人の資本が中心となるので上場企業と比べて大きなプロジェクトが動くような案件はほぼ無いと言えます。(しかし、数社が集まって出資しあう案件は別です)
令和元年10月から施行された消費税率引き上げについては、現在政府が検討段階ではありますが今後段階的にインボイス制度が導入され、消費税を国が根こそぎ取り上げていく方針に変わります。(フリーランス1000万ラインの撤廃)
この際に必要なものが、税務署から発行される”課税事業所番号(仮)”の記載による、正式な領収書(経費計上可能な形式)へ変更されます。(2020年以降)
このあたりのインボイス制度、軽減税率などは書き出すと長くなるので、また別記事で書いていきたいと思います。
※現在は姿を消した有限会社が、現在のフリーランスに近い形態となります。
※また法人も株式会社以外に、公益法人、一般社団法人、などの形態もあります。こちらも別の記事で書いていきたいと思います。

値引けない、タダで出来ない理由

ここまで読んで頂いて、普通の会社さんと変わらぬ経費が掛かっていることがお分かりいただけたと思います。
もちろん、クリエイターにとってお客様の求める費用対効果の達成や満足度は一番重要な要素です。
しかし、それを完全に保証するものでもないと言う事、売り上げ効果に関してはあくまで経験則と政治経済、ユーザーの動向などマーケティング要素が大きく含まれるので、そういった経験のあるクリエイターほど効果を出しやすいがそこの保証も出来ないと言う事。
もしそういった保証が無ければ、それ相応のクリエイターとの事前コンセンサスが必要だと言う事。
そういった要素を踏まえても、必ず作業は発生します。
その作業を行うための環境や運営維持管理コストもあります。
あるお客様から”あなたの作業費にはお金を払えない”と厳しいお言葉を頂いたこともありますが、人が動くと言う事はそこにはコストが発生するのがこのビジネス社会の常識です。
それをおっしゃられた担当者の方も、作業によってお給料を頂いているわけですから、なかなか口にしてよい言葉だとは思えませんが、おっしゃる意味はよく分かります。
クリエイターの作った成果物で成果を実際に上げるのは、その成果物の使い方もありますし、それが出来る上がるまでのプロセスも大いに関係があります。
もちろん、クライアント様の業界の現場や立ち位置までの把握はクリエイターやディレクターが一人でするのは難しいので、そこは共存し合って目的達成の道筋を構築していくことが大切になってきます。
フリーランスクリエイターはその知識を使ってそこの先導をしっかりと進めてクライアント様を導いていくだけのスキルも要求されます。
また、クリエイターはそのお仕事で生活している以上、タダで受けてしまっているともう仕事が成立出来なくなり、事業を続けられなくなります。
また、”タダでやってくれる”と言う認識が広がり、「フリーランスクリエイターはタダで作ってくれる」と言うイメージ広がって業界が潰れてしまい、廃業に追い込まれてしまいます。
我々クリエイターは好きな事をやっている反面、人の役に立ちたいと思ってる人が殆どですので、タダで対応する=機会を奪うという結果になってしまわないよう、私たちも一人一人がそこを意識して業務をやって行く必要があります。
また、クリエイター職は仕入れ商品を売るなど、余った在庫処分市ではありませんので、値引く=人件費を低下させる日本のデフレ不況を加速させる行為でもありますので、人件費を値引くと言う概念は業務上持ってしまうことは危険だと考えます。このことから、”値引き”と言う対応に関しては、基本的には否定するべきでしょう。
しかし、その前後の関係もありますので、都度ケースバイケースで柔軟に対応していきたいものです。

組織の中に属している間は感じない理不尽

会社員として働いていると、こういった取引先やクライアント様との生々しいやり取りと遭遇する機会がありません。
また、職種以外の事務作業、経理、フォローアップや商談にに参加することもありません。
自身の仕事の見積額を知ることも出来ませんし、どれほどの利益からどのように自分に給料が出ているのかのお金の流れも知ることが出来ません。
事業を興し、ある程度お客様を抱えたり、請負や業務委託、他社と協力してディレクションなどを行ったり、金額交渉を自分自身でやっていると、会社の組織が縮図としてすべて見えますので、日本企業の企業内部で行われているすべての事が大体把握できるようになります。
言い換えれば、一人で会社の事がすべてでき、経営運営が出来るようになります。
組織の一部の中だけでお仕事をしていると、ポジティブ要素もありますが、もちろんネガティブ要素もあり、見ることが出来ない事から一見”組織力の強さ”なるものを感じる事と思います。
しかし、そういった強さは経営者や現場に赴く営業、ディレクターがうまく収束をしたりまとめたりの努力があっての賜物です。
そういった経営者や現場仕事の苦労を自身が経営者になるまで知らないと言うのが現状です。
しかし、ネームバリュー、ブランド力による組織力の強さは悲しい事に確かに存在はします。
そういったところまで上り詰めたのも、結局は経営者の手腕によるものなので、組織の一部として働いているうちは特に知ることのできないところだと言えます。

まとめ

タダで請け負うと事業が続けられなくなる、クリエイターの職を奪う行為にもなり、また業界全体が無くなって行ってしまうことにつながります。
クリエイター自身はこういったことを避けたいので、基本的にはタダで仕事をすることはしません。自分だけの首が閉まるのではなく、全てのクリエイターに対しての迷惑行為になります。
値引きも同じく職を失いさせる行為であると同時に、人件費を値引くと言う行為は通念上、経済社会に悪い考えに他なりません。
かといって、クオリティの低いものに高い経費を掛けたくありませんので、フリーランス選びは慎重になる必要があります。
顧客目線になれるクリエイター、マーケティングや販路の知識がある、SEOに強くて詳しい、数字を上げた実績がある、フレームワークの組み立てができるなど、成果物の目的に合わせて選ばれるとより求める結果が得られるのではと思います。
クリエイターもクライアント様の成果アップに貢献する為、全力を尽くします。
しかし、思ったほどの成果が残せない事も時にはあります。途中で合わなくなることもあります。
クリエイター選びとコンセンサスは経費をかける以上、慎重に進め、お互いのマッチングも大切と言えるでしょう。

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